こんにちは、こんばんは、『みう太』と書いて『みうた』と申します!(Xアカウント)
今や任天堂の顔となったキャラクター『マリオ』といえば、アルファベットのMが書かれた赤い帽子、丸みのある大きな鼻、紺色のオーバーオールなど様々なトレードマークがありますが、「ふさふさとした豊かなヒゲ」もマリオを象徴する特徴のひとつです。
これら特徴は、1981年に発売された初登場作品『ドンキーコング』のころから変わっておらず、それこそマリオ本人の顔が見えていなくても、トレードマークが見えるだけで「マリオ」と認識できるほどの影響力を持っています。
任天堂公式からもマリオファミリーのヒゲを模したグッズは数多く販売されていて、わずかなヒゲの形の違いだけでマリオ、ルイージ、ワリオ、ワルイージと見分けられるのは、それだけ秀逸なキャラクターデザインの証といえるのではないかと思います。
そもそも、マリオにヒゲが付いたのに理由はある?
そんなマリオは、初登場から40年以上にわたってベースとなるデザインが変わらずに活躍を続けていますが、そもそもそのビジュアルに何か理由があるのか?といえば気になるところです。
調べてみると、マリオは当初イタリア系の移民であり、ニューヨークのブルックリンに住むブルーカラー(肉体労働者)というイメージでデザインされたらしく、職業も「大工」や「配管工」に設定されていました。

今でこそオーバーオールはファッションのひとつとして定着していますが、もともとは安全性や動きやすさに配慮して作られた作業着であり、ハンマーを入れて持ち運べる紐の「ハンマーループ」が付いていたり、定規を入れられる縦長の「スケールポケット」があったり、まさに作業員を象徴するコスチュームといっても差し支えありません。
マリオにブルーカラーという設定があるのであれば、オーバーオールを着ているのは頷ける一方で、あの特徴的なヒゲはなぜ付けられたのか…、その理由と役割を今回は紹介してみようと思います!
少ないドットでキャラクターを表現する『ヒゲ』

まず結論から言えば、マリオにヒゲの付いた最大の理由は「キャラクターに使用できるドットの少なさ」で、『ドンキーコング』に登場した初代マリオは、わずか16×16ドットの小さなグラフィックで表現しなければなりませんでした。
それだけ小さなサイズで頭身の高いキャラクターを描こうとすると、頭部に使えるドットが極端に少なくなり、当時の海外のビデオゲームでは「マッチ棒」のようなキャラクターも珍しくなかったといわれています。
マリオの生みの親である宮本茂さんも、「まずは人の顔らしく描こう」と意識してドットを打ったものの、目や鼻に加えて口まで描こうとすると圧倒的にドットが足りなくなってしまい、そこで「ヒゲを描けば口を描かなくていい」という発想からヒゲが付けられたそうです。

また、ヒゲの有無におけるメリットは開発のデザインだけでなく、プレイヤーにとっても「どちらを向いているか」が判別しやすくなり、特にファイアボールを放てる『スーパーマリオブラザーズ』以降の作品では、地味ながらゲームの機能性にも大きく関わっています。
ちなみにデザインについては帽子も同じような理由で描かれていて、やはり当時の少ないドットでは複雑に動く髪の毛を描くのは難しく、それをカバーするため帽子をかぶせ、描写に必要なドット数も節約していたとコメントされています。
今でこそヒゲも帽子もマリオを構成するには欠かせない要素となっていますが、これらはただ単にキャラクターのデザインを優先して描かれたのではなく、「ゲーム性」を意識して当てはめた結果必要になったというのは、いかにも任天堂らしいキャラクターのつくり方といえるかもしれません。
“HIGE”がステータスになった『マリオ&ルイージRPG』

限られたドット数という制約の中でデザインされたマリオのヒゲですが、そのヒゲがゲーム内で直接ピックアップされることは意外にもほとんどなく、初登場から20年近くはあくまで「マリオのシンボルのひとつ」でしかありませんでした。
しかし2003年にGBAで発売された『マリオ&ルイージRPG』では、攻撃力(POW)や防御力(DEF)などに加えて『ヒゲ(HIGE)』のステータスが用意されていて、これはマリオやルイージの「ヒゲのツヤの度合い」を表しています。
一見するとなんの役に立つのか分からないパラメータですが、これは他のゲームでいう「運(LUCK)」に相当していて、ヒゲの値が高ければ高いほど攻撃がクリティカルに当たりやすくなり、実はバトルへの影響力も少なくありません。

そして「HIGE」最大のメリットは「ショップの店員まで魅了できる」ことで、なんとHIGEが高ければ高いほどお店での取り引きが有利に働き、買い物はより安く、売却はより高く、冒険の支度が格段にしやすくなります。
この「HIGE」ステータスはマリオ&ルイージRPGにおいて今やおなじみであり、2024年に発売された最新作『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ』にも引き継がれていました。お店での値引きはなくなってしまいましたが、装備品で高めてラッキーヒットを狙うのも、強敵との戦いにはなかなか有効な戦略だったといえます。
ちなみにメタ的な考えではありますが、「ヒゲ」が「運」と等しいステータスだからこそ、HIGEの初期値を見るとマリオよりルイージの方が高いことが多く、特に『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』ではマリオのHIGEの値が20なのに対し、ルイージのHIGEは30と1.5倍も高く設定されていて、実はルイージの方が美しいヒゲの持ち主…だったりするのかもしれません。
よりマリオのシンボルとして確立された『スーパーマリオ オデッセイ』

1996年に『スーパーマリオ64』が発売されて以来、マリオ作品は横スクロールアクションの「2Dマリオ」と、広い世界を自由に探索できる「3Dマリオ」に分かれて展開していましたが、中でも2017年に発売された『スーパーマリオ オデッセイ』は、『スーパーマリオサンシャイン』から実に15年ぶりの「箱庭マリオ」として当時大きな話題になりました。
本作最大の特徴は「帽子投げ」という新アクションで、投げた帽子で小さな敵を弾き飛ばせるだけでなく、特定のキャラクターやオブジェクトに帽子を投げて「キャプチャー」すれば、体そのものをマリオが乗っ取って、思い通りに操作できることさえできました。
そしてこのキャプチャーされたキャラクターには、マリオの帽子とヒゲが付け加えられ、見た目からしてもシュールな「ヒゲの生えたキラー」や「ヒゲの生えたティラノサウルス」などが実現し、より「ヒゲ」がマリオのシンボルとして強調された作品でもあります。

ファミコン時代のように「ヒゲがマリオの向きを表している」という発想は、さすがに今の時代には必要のない考え方ですが、ヒゲがマリオを象徴する要素であったからこそ、「敵キャラクターにもヒゲが生えていればマリオと分かる」ところまで昇華できたのではないかと思います。
これがきっかけで…とは言い切れないものの、マリオのヒゲをモチーフにしたグッズは少しずつ増えていて、2019年に国内初の直営店としてオープンした「Nintendo TOKYO」や、2021年にUSJが開業した「スーパー・ニンテンドー・ワールド」などでも、ヒゲを強調した様々なグッズやアパレルが販売されました。
『スーパーマリオ オデッセイ』のキャプチャーはシステムとしても評価が高く、普段操作する機会のない敵キャラクターまで操れるのは非常に新鮮な体験だったので、さらにキャプチャーの種類を増やした『スーパーマリオ オデッセイ2』を望む声も、意外と多かったりするのかもしれません。
語られることは少なくても重要な「ヒゲ」
というわけで今回はマリオの「ヒゲ」について、その役割や活躍を簡単に紹介してみましたが、意外とゲーム内でヒゲがピックアップされていることは少なく、「なんとなくチャームポイントとしてデザインされた」くらいに捉えていた方も多いのではないかと思います。
しかしそのきっかけは、ファミコンという厳しい制約を乗り越えてキャラクターを表現するための工夫で、「よりゲームを遊びやすくするため」にヒゲが描かれたことを知ると、「どんなデザインにも意味がある」のだと再認識させられます。

長い歴史の中で、マリオには「ファイアマリオ」や『ハンマーマリオ』など様々な変身が登場してきましたが、どのようなコスチュームに身を包んでもヒゲが変形することはあまりなく、それだけマリオを象徴する「不変なもの」として大切にされてきたのかもしれません。
とはいえ、ヒゲが直接的に関わってくるタイトルは未だ『マリオ&ルイージRPG』くらいしかないので、今後はシンボルとして描かれるだけでなく、何か「実用性のあるヒゲ」のゲームが出てきても面白そうだと思う今日この頃です。
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