『大乱闘スマッシュブラザーズ』が世に出るまでには、いくつもの苦労やハードルがあった話

任天堂のゲーム
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どうも、みう太(@arai_miuta)です(ΦωΦ)

1999年から続く『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズのディレクターといえば桜井政博さんですが、2022年8月24日にYoutubeチャンネル『桜井政博のゲーム作るには』が突如公開され大きな話題を集めました。

桜井さんが過去に手掛けたゲームを軸に、どのようなゲーム性が制作に求められているか、仕事に対する姿勢、グラフィックやエフェクトについてなど…開発の裏話のようなところまで知れて正直『無料で見て良いのか…?』と思うほどです。

※この記事は2018年5月7日に投降した記事を再構築したものです。

スマブラの開発当初は今のように期待されていなかった

そんなスマブラでおなじみの桜井さんですが、2022年10月22日に公開された『大乱闘スマッシュブラザーズ 【企画コンセプト】』という動画ではそのタイトルの通り、ニンテンドウ64の『大乱闘スマッシュブラザーズ』の開発秘話が語られています。

まだ企画段階だったスマブラのプロトタイプ『対戦格闘ゲーム竜王』の映像まで紹介されていて、その歴史はかなり興味深いものがあります。

2018年12月に発売された『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』ではDLCを含めれば『ペルソナ5』や『キングダムハーツ』などのキャラクターまで参戦し、任天堂問わずどの作品からキャラクターが登場するのかは常に話題でした。

しかし昔のインタビュー記事などを読み返してみると開発当初はあまり期待されておらず、シリーズが続くかどうか以前にゲームとして完成するかどうか…すら不安視されていたようです。

今でこそ非常に高い人気を誇っている『スマブラ』ですが、今回は開発当初はどのような苦労や悩みがあったのかをまとめてみようと思います!

参考とした記事はこちら

開発の時間がないから『じゃあ』格闘ゲームに決定

『大乱闘スマッシュブラザーズ』は1999年1月に記念すべき1作目が発売され、『マリオ』や『カービィ』『ピカチュウ』などが一堂に会するCMはかなり大きなインパクトがありました。

開発は『星のカービィ』シリーズなどでも知られる『ハル研究所』で、ディレクターはこのころから変わらず桜井政博さん、プログラムは当時ハル研究所の社長だった岩田聡さんが担当しました。

桜井さんはファミコン、スーパーファミコンとカービィに関わる仕事をしていましたが、64になって初めて『違うことしていいよ』と言われ、スマブラの原型となる『対戦格闘ゲーム竜王』と、『ラジコンロボットアドベンチャーゲーム』の2つの企画を立ち上げました。

動画でも紹介されていたように2つの企画は任天堂にプレゼンテーションしたところ大きな評価を得ましたが、そのときに残ったのは『竜王』ではなく『ラジコンロボット』の方だったそうです。

しかしまだニンテンドウ64のタイトルを作ったことのなかったハル研究所としてはもっと即効性があるもの、具体的にはクリスマスまでに開発できるものが望ましいとして、その時点で逆算すると開発期間が1年1ヶ月程度しかなかったと明かしています。

ラジコンロボットのゲームも大きな手ごたえを感じていましたが、形にするには少なくとも2年はかかると判断し、何とか間に合いそうな対戦格闘ゲーム『竜王』の方を選び開発がスタートしました。

当時はまだ任天堂のキャラクターを使うことも決まっておらず、まったく違う人型のキャラクターを動かすゲームでしたが、『場外にふっとばして敵を倒す』『ダメージが増えるとふっとびやすくなる』などのコンセプトはすでに決定していたことが映像からも分かります。

ダッシュやガードに加えて空中ジャンプ、キモとなるスマッシュ攻撃まですでに取り入れられていたことを考えると、この時点ですでに現在のスマブラにかなり近いものになっていたように思えます。

場外へ吹き飛ばされたときの声が少しシュールだったり、さすがにキャラクターのモーションに硬さはありますが、動きはどことなくキャプテン・ファルコンっぽくもあり…意外とここから引き継がれたものも多いのかもしれません。

1回出されたNGを乗り越えた『任天堂キャラクターの許可』

対戦格闘ゲームでの開発は決まったものの、家庭用のオリジナル格闘ゲームでヒットしたものは少なく、何か工夫が必要になっていました。

大きな人気を集めていた『ストリートファイター』や『鉄拳』、『バーチャファイター』などはアーケードから始まり『自分の家でも遊べる』という魅力から大ヒットへ繋がりましたが、家庭用のオリジナルゲームでは最初に見ず知らずのキャラクターがいくら用意されたところで、なかなか新規のユーザーには魅力が伝わらない問題があったようです。

そこで、それぞれのキャラクターの個性を十分に目立たせ、他のゲームには真似できないセールスポイントを持たせるため『任天堂のバトルロイヤル』という案がここで持ち上がります。

実現のためには任天堂本社に勤める宮本茂さんの許可を得る必要がありましたが、いわばそれは『任天堂の看板を貸してくれ』というお願いであって、1回目の交渉ではNGを出されてしまいました。

それは、そもそもスマブラの世界に落とし込んだマリオが『マリオらしくない』と感じれば問題がありますし、逆に『すごく良い』と思ってもそのイメージを後の作品に引き継がせなければならず、それができるか確証がない以上安易にキャラクターを貸し出すわけにはいかなかったようです。

実際にキャプテン・ファルコンの『ファルコンパンチ』やルイージの少しいじけた態度など…『スマブラの影響でイメージが固まった』というキャラクターも少なくないかもしれません。

ところが交渉を持ちかけた岩田社長は宮本さんからNGを出されたことを桜井さんに告げず、『マリオ』『ドンキーコング』『サムス』『フォックス』が操作できるプレゼン用のバージョンを言わば『勝手に』開発しました。

宮本さんからの許可を貰うには第一印象が大切だと考え、最初から完成に近いものを見せて『これなら任せても良い』というイメージを持ってもらう必要があり、『作ったもので納得してもらう』という正攻法を取ることにしたそうです。

結果、その4人のキャラクターが戦うバージョンの『スマブラ』は宮本さんにも認められ、『これなら進めて貰っても良い』という反応を貰ったことで、晴れて『ニンテンドーオールスター』への一歩を踏み出すことができました。

キャラクターやステージのイメージを崩さない

マリオやリンクといった任天堂を代表するキャラクターの使用許可は下りましたが、桜井さんいわく開発中に思い浮かぶのは『オリジナルを作った人たちの顔』だったそうです。

これまで何年もかけて培われてきたキャラクターですから、そのイメージを崩してしまったり、裏切ってしまうようなことをしてはいけないというプレッシャーが強くあったとコメントしています。

なのでキャラクターの原作者にスジを通すことを強く意識していて、少し開発が進む度に原作者に許可を貰いに行ったり、確認して貰って了解を頂いたり…かなり余裕のないスケジュールを過ごしていたようです。

キャラクターの表現にも苦労があって、例えば『マリオ』は宮本さんに見せるデモのために独自で開発していたので、任天堂からの資料やデータはほとんど受け取っていませんでした

そのため開発陣は『スーパーマリオ64』のマリオのポリゴンを見ながらモデルを制作したのですが、やや上から見下ろしたカメラに映ったマリオをベースにしていたのもあって、初代スマブラのマリオは少しだけ顔が大きくなってしまいました。

他にも『サムス』や『ネス』に関してはそもそも3Dで描かれたことが過去にありませんし、『ブリンスタ』などのステージも想像でデザインする必要がありました。

当時『対戦格闘ゲーム』は数あれど、向き合った1対1の2人対戦が基本で、4人同時に対戦できる格闘ゲームは非常に貴重な存在でした。

4人のキャラクターを同時に表示してストレスなく動かすには、ステージやキャラクターに使うポリゴンやテクスチャの数を減らして処理を軽くする必要がありました。

なのでどうしても足が三角形のように尖ってしまったり、ステージの背景が2Dのイラストのようになってしまったりと表現に限界がありましたが、任天堂から『キャラが似ていない』という意見は出なかったことに安堵したようです。

『大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS / Wii U』では8人対戦のときに処理が難しいという理由で『アイスクライマー』が参戦できなかった過去がありますが、やはりパーティゲームとしてまず『問題なく動かせる』ことが最重要事項なのは今も変わっていないと思います。

最新作のスマブラSPではアイスクライマーの参戦はもちろん、『フォーサイド』では並び立つビルの中身まで作り込まれていたり、『天空の祭壇』では『ドラゴンクエスト11』の世界観が細かに再現されていたり…ある意味アクション以上に技術の進化を感じるところかもしれません。

過去から連なった最新作までの『開発期間』

様々な制約と戦いながら、わずか1年少しで開発された初代『大乱闘スマッシュブラザーズ』ですが、最新作であるスマブラSPは『3DS / Wii U』のDLC制作中にすでに企画書の草案が作られていたそうで、2018年12月に発売されたことを考えるとおよそ3年~4年の開発期間が設けられていたことになります。

『for 3DS / Wii U』の頃からボリュームを大きくすることには限界を感じているらしく、新キャラクターや新ステージを必要以上に増やす必要はない…との考えも明かしていますが、スマブラSPの作り込みをみると『プレイヤーの要望にどれだけ応えられるか』をだんだん重視するようにもなったのかもしれません。

当時の記事はこちら

スマブラSPの企画段階ではこれまでのスマブラをより拡充していくのか、キャラクターを削減してでもガラリと新しいものにするか2択だったのですが、前作から引き続きバンダイナムコが開発を担当することが決まり、開発体制やノウハウを引き継げることから全員参戦の本作につながったといわれています。

確かに『マリオ』や『ピカチュウ』といった定番のキャラクターはすでにモーションもおなじみになってきているのでそれを活用しないのはもったいないですし、そういう意味では1作ごとの開発期間というより、過去から積み重ねてきたものがすべて連なった開発ともいえるかもしれません。

コメント

  1. 匿名 より:

    64の頃のリンクの顔がやばすぎる。
    後、動画内で「任天堂のキャラクターが殴り合いなんてとんでもない」と発言してるけど、初代スマブラの参戦キャラは原作で冒険したり戦ったり命懸けでレースしてるキャラだけなんだよね(戦わないキャラが参戦するようになったのはforから)

    • グラフィックに関しては当時はかっこいいと思っても、やっぱり今見ると時代の変化を感じます…!。
      初代スマブラがちゃんと原作で戦っているキャラクターなのは、やっぱりここでイメージを損ねると任天堂から却下される…という意識がありそうです。
      逆に今『むらびと』や『Wii Fit トレーナー』などの戦わないキャラが参戦できているのは、任天堂も『桜井さんになら任せても大丈夫か』と考えが変化したから…なのかもしれませんね。

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